アスベストには使われている建材の種類や使用されている場所によってそれぞれ3つのレベルがあります。アスベスト対策はこのレベルによって内容が異なります。今回はアスベストのレベルとその対策について紹介いたします。
レベル1
アスベストを含む建材は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)などによってレベル1~3に区別されています。最も病気発症のリスクが高いのがレベル1です。
建材の種類 <レベル1>
レベル1に区分されているアスベスト(石綿)を含む建材は、吹付け材です。「吹付け石綿」「石綿含有吹付けロックウール」「湿式石綿含有吹付け材」「石綿含有吹付けバーミキュライト」といった種類があります。アスベストの含有率が高く、飛散しやすい建材であるため慎重かつ徹底した対策が必要です。
使用されている場所 <レベル1>
昭和中期から後期にかけて建てられたビル、工場、集合住宅、学校・幼稚園・保育園、体育館、講堂、温泉施設などに多く使われています。吹付け箇所は、柱や梁、天井、壁、鉄骨、エレベータ周りなどです。
作業内容 <レベル1>
アスベストを含む吹付け材は、経年劣化によりさらに飛散しやすくなっています。アスベストの繊維が空気中に浮遊すると人が吸い込む危険性があるため、除去するか封じ込めや囲い込みといった作業が必要です。
封じ込めとは、薬剤でアスベストを含む建材を覆ったり固着・固定化したりする工法を指します。一方、囲い込みとは板状の材料で覆って建材を密閉する工法です。どの方法を選択するのかは、石綿含有吹付け材の劣化状況や建物の解体が必要かどうかなどによります。
対策について <レベル1>
レベル1の建材を取り扱う際には、作業場所の隔離や作業員の教育及び適切な防じんマスクや保護着による安全確保が義務づけられています。また、アスベストを使用している建築物や工作物を解体する場合は、事前調査や看板などを利用した周囲への告知の他、労働基準監督署、都道府県庁、地方公共団体といった関係各署への届出も必要です。
レベル2
アスベスト含有の吹付け材以外でも慎重な対策が必要とされる建材がレベル2に該当します。
建材の種類 <レベル2>
レベル2に区分されているアスベスト(石綿)を含む建材は、貼り付け材です。「石綿含有けいそう土保温材」などの保温材や、「石綿含有耐火被覆板」といった耐火被覆材、断熱材として使われる「屋根用折板石綿断熱材」などがあります。レベル1に比べて飛散のリスクは低いものの、アスベスト含有率の高い建材が多く、レベル2も入念な対策が必要です。
使用されている場所 <レベル2>
保温材は、ボイラー本体及びその配管、空調ダクトなど、耐火被覆材は建築物の天井、柱、梁、壁、床など。煙突用の断熱材としても使われています。
作業内容 <レベル2>
レベル2の建材はシートに包まれていたり、フェルト状になっていたりする飛散しにくい形状ですが、比重が小さく粉塵が出やすいという特徴があります。そのため、シートが破れているなどの破損があると高濃度のアスベストの飛散が想定されるのでレベル1に準じた作業が必要となります。
対策について <レベル2>
レベル1と同様に作業員の安全対策や周囲への告知、関係各署への届出などが義務づけられています。ただし、労働基準監督署への提出書類が減り、作業員の安全装備も1ランク簡易な物になります。
レベル3
アスベストが使われている建材の中で、病気を発症するリスクが一番低い区分がレベル3です。アスベストの含有率が低く飛散しにくい性質ですが、阪神淡路大震災以降、建物を解体する際の問題などがクローズアップされ法の改正が進んでいます。
建材の種類 <レベル3>
レベル1、2に含まれない成形板などの石綿含有建材は、レベル3に区分されます。割れにくい建材なので通常の使用ではアスベストの飛散はほとんどありませんが、解体作業などでは損傷による飛散の恐れがあるので、やはり安全対策は必要です。
使用されている場所 <レベル3>
建築物の天井や壁、床、屋根、煙突、材設備配管、そして設備機器部品にも使われています。住宅ではアスベストに関する法改正前(2006年9月1日以前)に建てられた場合に多いです。
また国が段階的に規制したため、古い建材ではアスベスト混入表記がないレベル3に該当する建材もあります。実際に大阪府貝塚市のふるさと納税の返礼品として採用された珪藻土のバスマットやコースターから、国の規制値の0.1%の3倍以上のアスベストが見つかった事例もあり注意が必要です。
作業内容 <レベル3>
破壊・粉砕によるアスベストの飛散を防ぐために、レベル3の建材は基本的に手作業による除去になります。
対策について <レベル3>
作業場所ではアスベストの飛散防止の対策として散水をしながら行う、作業する人は防じんマスク着用などが義務づけられています。
まとめ
レベル3の建材は自主規制を行っている地方自治体も多くあります。国の施策では、2020年5月に大気汚染防止法の一部を改正する法律が可決され2022年4月の石綿障害予防規則ら主要法令の改定により、事前調査を行わずに解体した場合には罰則が下されることにもなります。
よって、アスベストを使用した建物の解体は、労働安全衛生法や大気汚染防止法などにより事前調査や作業の届け出が必要となります。施工業者などに問い合わせることで使用の確認をとることもできますが、改修や増築されている場合やアスベストに関する記録がない場合は正確なことが分かりません。
また、2022年4月の法改正内容を熟知した上で対応できる業者がまだそこまで多いわけでもありません。
事前調査によるアスベスト建材の有無及び含有や含有量の検査分析は専門機関に調査を依頼して、スピーディーな解決を目指しましょう。
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