企業必見!アスベスト資産除去における債務リスクと対策について

アスベスト

「アスベスト」と「債務」の関係に不安を感じていませんか?アスベスト含有建物の解体や改修には、所有者責任や予期せぬコスト発生など、多大な債務リスクが潜んでいます。

本記事では、アスベスト資産除去に伴う具体的な債務リスク事例を分かりやすく解説。さらに、リスクを最小限に抑えるための対策として、建物調査の重要性や専門家への相談、保険活用など、実践的な情報を網羅的にご紹介します。アスベスト問題から企業を守るための必読書です。

アスベストとは?

アスベストとは、天然に産出する繊維状の鉱物の一種です。その特徴として、耐熱性、耐薬品性、絶縁性、防音性などに優れていることから、建材を中心に、自動車部品や電気製品など、様々な用途に広く利用されてきました。

アスベストの種類と特徴

アスベストは、その鉱物学的特徴から「蛇紋石系」と「角閃石系」の2つに大分類され、さらに6つの種類に分類されます。日本では、主に以下の6種類が使用されていました。

種類特徴主な用途
クリソタイル(白石綿)繊維が柔らかく、曲げやすい。最も多く使用された。屋根材、壁材、保温材、断熱材など
クロシドライト(青石綿)繊維が硬く、直線状。発がん性が最も高いとされる。保温材、断熱材、耐火材など
アモサイト(茶石綿)繊維が硬く、直線状。発がん性が非常に高い。保温材、断熱材、耐火材など
アンソフィライト繊維が硬く、直線状。断熱材、保温材など
トレモライト繊維が硬く、直線状。断熱材、保温材など
アクチノライト繊維が硬く、直線状。断熱材、保温材など

出典:厚生労働省「鉱物及び石綿含有材料等に関する基礎的な知識」

アスベストの危険性

アスベストは、その優れた特性から「奇跡の鉱物」とも呼ばれていましたが、後にその繊維が肺がん、中皮腫、アスベスト肺などの深刻な健康被害を引き起こすことが明らかになりました。アスベスト繊維は非常に細く、肉眼では見えません。そのため、知らずのうちに吸い込んでしまう可能性があります。

アスベストによる健康被害

  • 肺がん アスベスト繊維を長期間吸入することで、肺がんを発症するリスクが高まります。喫煙との相乗効果も指摘されています。
  • 中皮腫 胸膜や腹膜などに発生する悪性腫瘍です。アスベストばく露との関連性が非常に強いことが知られています。
  • アスベスト肺 アスベスト繊維を吸入することで、肺が線維化し、呼吸困難を引き起こす病気です。

アスベストによる健康被害は、ばく露から発症まで長い年月を要することが特徴です。そのため、過去にアスベストを扱っていた労働者だけでなく、その家族や周辺住民にも健康被害が及ぶ可能性があります。

出典:独立行政法人環境再生保全機構「アスベスト(石綿)による健康被害」

アスベスト資産除去の債務リスク

アスベスト資産除去は、所有者や関係者に様々な債務リスクをもたらす可能性があります。建物の解体や改修工事におけるアスベストの除去は、想像以上に費用がかかり、予期せぬトラブルが発生することも少なくありません。法的な責任問題に発展するケースもあるため、事前にリスクを認識し、適切な対策を講じることが重要です。

所有者責任とアスベスト除去

建築基準法の改正により、2006年10月以降に建築した建築物では、アスベスト含有建材の使用は原則禁止されています。しかし、それ以前に建てられた建物には、現在もアスベストが使用されている可能性が高く、その所有者には、適切な管理と除去が義務付けられています。

建物の所有者がアスベストの存在を知りながら放置し、健康被害が発生した場合、所有者は損害賠償責任を負う可能性があります。これは、居住者だけでなく、工事関係者や近隣住民も含まれます。所有者責任を問われないためには、アスベストの有無を把握し、適切な対策を講じる必要があります。

建物調査の重要性

建物の所有者は、アスベストの有無を把握するために、専門業者による建物調査を実施する必要があります。建物調査では、建築図書などを参考に、アスベスト含有建材の使用箇所や種類、劣化状況などを詳細に調査します。調査結果に基づいて、適切な除去計画を立案することができます。

アスベスト含有建材データベースの活用

建築物の築年数や構造などから、アスベスト含有建材の使用可能性を推測できるデータベースがあります。これらのデータベースを活用することで、より効率的にアスベストの有無を把握することができます。

建物の解体・改修時における債務

建物の解体や改修工事を行う際には、アスベストの有無を事前に確認し、適切な除去工事を行う必要があります。もし、アスベストの除去を怠ったり、不適切な方法で除去を行ったりした場合、健康被害が発生するリスクが高まります。その結果、工事の遅延や追加費用が発生するだけでなく、損害賠償請求訴訟に発展する可能性もあります。

また、解体・改修工事の発注者は、請負業者に対して、アスベストの有無に関する情報提供義務を負います。発注者が虚偽の情報を提供したり、必要な情報を提供しなかったりした場合、請負業者から損害賠償請求訴訟を起こされる可能性があります。

区分内容
事前調査アスベストの有無や種類、量などを正確に把握するために、専門業者による事前調査が必須です。
除去計画の作成事前調査の結果に基づき、適切な除去方法や工程、安全対策などを盛り込んだ除去計画を作成する必要があります。
専門業者への委託アスベストの事前調査や除去工事は、専門的な知識や技術、設備を要するため、必ず専門業者に委託しましょう。

予期せぬコスト発生の可能性

アスベスト資産除去においては、当初の見積もりを超える費用が発生するケースが少なくありません。例えば、建物の解体工事中にアスベストが発見された場合、除去工事の追加や工事期間の延長が必要となり、当初の見積もりを大幅に上回る費用が発生する可能性があります。

事例1:除去費用の増加

築50年のオフィスビルを解体する際、当初の見積もりではアスベスト除去費用として500万円が計上されていました。しかし、解体工事開始後に、当初の想定を上回る量のアスベストが発見されたため、除去費用が1,000万円に膨れ上がってしまったというケースがあります。

事例2:訴訟リスク

アスベストによる健康被害は、発症までに長期間を要することが多く、過去の建物の所有者や管理者が訴訟リスクにさらされる可能性があります。過去にアスベスト関連業務に従事していた従業員や、アスベスト含有建材を使用していた建物の近隣住民から、健康被害を訴える訴訟が提起されるケースも少なくありません。

これらのリスクを最小限に抑えるためには、アスベストに関する専門知識を持った弁護士や司法書士に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。 また、アスベスト関連のリスクをカバーする保険に加入することも有効な手段となります。

具体的な債務リスク事例

アスベスト資産除去に伴う債務リスクは、現実的に発生する可能性があります。ここでは、具体的な事例を通して、どのようなリスクが考えられるのかを見ていきましょう。

事例1:過去の所有者による責任追及

築年数の古いビルを解体し、新たに商業施設を建設する計画が持ち上がったとします。解体工事開始後、建材にアスベストが使用されていることが判明しました。この場合、現在の所有者だけでなく、過去の所有者に対してもアスベスト除去費用などの負担を求める責任追及が発生する可能性があります。過去の所有者が判明しない、あるいはすでに倒産しているなど、責任の所在が不明確な場合、現在の所有者がすべての費用を負担せざるを得ないケースも少なくありません。

  • 過去の所有者への責任追及が難しい場合、現在の所有者が全額負担となるリスクがある。
  • 過去の改修工事の記録が残っていない場合、責任の所在を明らかにすることが困難になる。

三井住友トラスト不動産 吹付けアスベストと建物所有者兼賃貸人の工作物責任

事例2:除去費用の増加

当初の見積もりでは500万円とされていたアスベスト除去費用が、工事開始後に1,000万円に膨れ上がったというケースも考えられます。これは、建物の構造が複雑で、当初の想定よりも多くのアスベスト使用箇所が発見された場合や、アスベスト除去作業中に想定外の事態が発生した場合などに起こり得ます。予算超過は、事業全体の計画に大きな影響を与える可能性があります。

項目当初の見積もり実際の費用
アスベスト除去費用500万円1,000万円
追加工事費用200万円
合計500万円1,200万円
  • 除去作業の遅延は、工期の延長や違約金発生のリスクにつながる。
  • 想定外の費用発生は、資金繰りを圧迫する可能性がある。

全国住宅供給公社等連合会 資産除去債務に関する実務指針

事例3:訴訟リスク

アスベスト除去工事を適切に行わなかったために、周辺住民や作業員に健康被害が発生した場合、損害賠償請求訴訟のリスクがあります。訴訟となれば、多額の賠償金や訴訟費用の支払いが発生するだけでなく、企業イメージの低下は避けられません。また、訴訟対応に時間と労力を費やすことになり、本来の事業活動に支障をきたす可能性も考えられます。

  • 訴訟リスクを避けるためには、適切な工法を選択し、安全対策を徹底することが重要。
  • 周辺住民への説明責任を果たし、理解と協力を得ることが大切。

日本CSR普及委員会 アスベストが使われた建物の占有者・所有者の法的責任

アスベスト資産除去における債務リスクへの対策

アスベスト資産除去に伴う債務リスクを最小限に抑え、企業を守るためには、事前の対策が不可欠です。具体的な対策として、以下の3つが挙げられます。

対策1:現状把握

まずは、所有する建物や設備にアスベストが使用されているか、使用されている場合はその場所や量などを正確に把握することが重要です。現状把握を怠ると、後になって予期せぬ債務が発生するリスクが高まります。

建物調査の重要性

専門業者による建物調査は、アスベストの有無やその程度を正確に把握するために非常に重要です。調査結果に基づいて、適切な除去計画や予算を立てることができます。建物調査を怠ると、アスベストの除去費用が当初の見積もりを大幅に上回ったり、工期が遅延したりする可能性があります。また、アスベストの有無を把握せずに建物の解体や改修工事を進めてしまった場合、法令違反に問われる可能性もあります。さらに、従業員や周辺住民に健康被害が発生した場合、多額の損害賠償を請求される可能性もあります。このように、建物調査は、アスベスト資産除去における債務リスクを回避するために非常に重要な対策と言えるでしょう。

アスベスト含有建材データベースの活用

過去の建築図面や資料が残っていない場合でも、建築年や構造からアスベスト含有の可能性を推測することができます。国土交通省が提供する「石綿(アスベスト)含有建材データベース」などを活用することで、過去の建築事例を参考に、所有する建物にアスベストが使用されている可能性をある程度絞り込むことができます。

対策2:専門家への相談

アスベストに関する法律や規制は複雑で、専門知識がないと理解が難しい場合もあります。そのため、弁護士やアスベスト除去専門業者など、専門家への相談が重要になります。

弁護士・司法書士への相談

アスベストが原因で法的紛争に発展した場合、専門家である弁護士または司法書士に相談することが重要です。弁護士は、アスベストに関する訴訟や示談交渉の経験が豊富で、依頼者の権利を守るために最善の法的アドバイスを提供します。また、司法書士は、不動産登記や相続手続きなど、アスベスト問題に関連する法的問題についてサポートを提供することができます。

アスベスト除去専門業者への相談

アスベスト除去は専門性の高い作業であり、適切な知識や技術を持たない業者が行うと、かえって健康被害のリスクを高める可能性があります。そのため、アスベスト除去工事を行う場合は、必ず専門の資格や許可を持った業者に依頼することが重要です。専門業者は、安全かつ適切にアスベストを除去するためのノウハウや経験を有しており、法令に準拠した施工を行うことができます。また、万が一、工事中にトラブルが発生した場合でも、適切な対応を期待することができます。

対策3:保険の活用

アスベスト資産除去には、予期せぬコストが発生する可能性もあります。そのため、保険を活用してリスクに備えることも有効な対策です。

アスベスト関連保険の種類

アスベスト関連のリスクに対応する保険には、以下のようなものがあります。

保険の種類主な補償内容
アスベスト工事保険アスベスト除去工事中に発生した事故による損害を補償
アスベスト賠償責任保険アスベストが原因で第三者に損害を与えた場合の賠償責任を補償
建物解体工事保険建物解体工事中に発生した事故による損害を補償(アスベスト関連の損害を含む場合がある)

これらの保険は、企業がアスベスト資産除去に伴うリスクをヘッジするために有効な手段となります。保険の内容や加入条件は保険会社やプランによって異なるため、事前にしっかりと確認することが重要です。

保険加入のメリット

保険に加入することで、以下のようなメリットがあります。

  • 経済的リスクの軽減:アスベスト除去工事や訴訟費用など、高額な費用が発生するリスクに備えることができます。保険金を受け取ることで、企業の財務負担を軽減することができます。
  • 事業継続性の確保:予期せぬ事態が発生した場合でも、保険金によって事業を継続するための資金を確保することができます。事業中断による損失を最小限に抑え、早期の事業再開を支援します。
  • 専門家によるサポート:保険会社は、アスベストに関する専門知識を持った担当者を配置していることが多く、加入企業に対して適切なアドバイスやサポートを提供しています。リスク管理体制の強化や従業員への安全教育など、企業の安全対策を支援します。

アスベスト資産除去における債務リスクは、適切な対策を講じることで最小限に抑えることができます。現状把握、専門家への相談、保険の活用など、多角的な対策を組み合わせることで、企業は安心して事業を継続することができます。

まとめ

本記事では、企業が直面する可能性のあるアスベスト資産除去に伴う債務リスクについて解説しました。アスベストは、建物の解体・改修時にその存在が明らかになるケースが多く、所有者責任や予期せぬコスト発生のリスクを孕んでいます。このようなリスクを回避するためには、建物調査による現状把握、弁護士やアスベスト除去専門家への相談、アスベスト関連保険の活用などの対策が重要です。企業はアスベスト問題を他人事と考えず、適切なリスク管理と対策を講じるようにしましょう。

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