かつては塗料にもPCBが使われていました。PCBは廃棄方法に規定があり、塗膜も対象になります。安全に処理するためにも、塗膜にPCBが使われているのかを調査しましょう。
今回はPCBが使われている塗膜についてご紹介いたします。
PCBが含まれる塗膜とは
PCBが含まれる塗膜についてご説明します。
どんな塗膜にPCBが含まれている?
1960年代中頃〜1970年代中頃に使用されていた塩化ゴム系塗料にPCBが添加されていました。
なぜPCBが使われた?
PCBは、水に溶解しにくく、熱で分解しにくい、なおかつ燃えにくく、電気を通しにくいという化学的に優れた性質を持っています。
それゆえ、電気機器の絶縁油やノンカーボン紙、熱交換器の媒体など多様な場面で使用されていました。また材料の柔軟性を高め、加工しやすくする目的で可塑剤としてPCBが添加されることもありました。
どんな場所で使われている?
1966年〜1974年に建設・塗装されたものに、PCBを含む塗料が使用されていた可能性があります。
主に、国や地方自治体など公的機関が管理する公共インフラに多いという特徴がありますが、ほかにも公共性の高い一部のインフラにも使用されているとのことです。
具体的には、鋼製橋梁や鋼製洞門、排水機場の鋼構造物、石油貯蔵タンクやガス貯蔵タンクなどの鋼製タンク、鋼製船舶、水門・鉄管の鋼構造物などに使われることが多かったようです。
どのような調査や基準がある?
PCBの調査方法や基準についてご説明します。
PCBの含有量試験
まずは、該当期間に建設・塗装された建築物の工事仕様書や設計書から、PCBが塗料に含まれていたかどうかを確認しましょう。
使用が認められた場合や、資料が不足しており塗料の内容が不明の場合は塗膜のサンプル採集を行い、PCB含有量試験を実施してください。
塗料に含まれる有害物質を液体に溶け出させることで、溶媒中のPCB濃度を測定します。
そして、橋梁や洞門、貯蔵タンク、船舶などの塗膜を「PCB汚染物ではない」もしくは、「低濃度PCB廃棄物」「高濃度廃棄物」の三つの区分に的確に判定していきます。
汚染物となる有害基準
気になる有害基準ですが、100,000mg/kg以上のPCBが塗料に含まれている場合は高濃度PCB汚染物として扱われます。高濃度PCB汚染物は、PCB廃棄物としての処理が必要です。
PCB含有量が0.5mg/kg以上100,000mg/kg以下の場合は、低濃度PCB汚染物として扱われ、無害化処理認定施設での処理が認められています。
つまり、0.5mg/kg以下のものはPCB汚染物には該当しません。
PCB含有の塗膜処理方法
PCB含有の塗膜処理方法
PCB含有塗膜の除去方法
PCB含有塗膜を除去する方法は、以前は「ブラスト工法」とよばれるものが主流でした。
しかしこの方法だと粉塵が発生し、作業関係者の体内に誤って吸引され、健康被害を起こす危険性が高いため問題とされていました。PCBは人間の体内で分解することができない物質であり、蓄積されると発癌性や皮膚障害を起こすことが明らかになっていたからです。
そこで、現在行われている除去方法の一つに「インバイロワン工法」というものがあります。
この工法では、アルコール系溶剤を使って塗膜の除去や剥離を行っており、粉塵が発生しないというメリットがあるため、PCB含有塗膜の除去に適しています。
いつまでに処理が必要?
高濃度PCB廃棄物は2023年3月まで、低濃度PCB廃棄物は2027年3月までに処理をする必要があります。
これらの処分期間を過ぎてしまうと、PCB廃棄物は事実上処分することができなくなってしまうので要注意です。
日本でPCB含有の塗膜が処理できる場所は少ない
高濃度PCB廃棄物は広域処理施設であるJESCOで、低濃度PCB廃棄物は民間の処理施設で廃棄をする必要があります。
PCB含有塗膜に含まれるPCBは微量なことが多く、低濃度PCB汚染物として扱われることがほとんどです。
また、PCB含有塗膜には鉛が含まれていることが多いため、PCBと鉛のどちらも処理可能な施設に依頼する必要があります。
日本国内において、そのような低濃度PCB含有塗膜を処理できる施設民間会社で30社以上あり、運搬処分費用や対応エリアに特徴があります。
一方で、高濃度PCB廃棄物はJESCOのみでの対応となり全国に3箇所しか存在していないため、日本においてPCBが処分できる施設は限られていると言えます。
まとめ
PCB廃棄物の処理には期限があり、それを過ぎてしまうと処分することができなくなってしまいます。期日付近は混み合うことも予想されるため、該当期間の建造物を所有されている方は、塗膜中へのPCB混入の有無に関わる調査・分析を早めに行っておくと安心です。
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