電気工事におけるアスベスト危険性: 発覚から対策まで徹底解説

アスベスト

電気工事とアスベストの関係に不安を感じていませんか?
古い建物では、電気配線や設備にもアスベストが使われていることがあり、電気工事中にアスベストに曝露されるリスクがあります。

この記事では、電気工事におけるアスベストの危険性について、具体的な事例を交えながら解説します。 アスベストが原因で発症する病気やその潜伏期間、症状についても詳しく説明し、電気工事前に確認すべきことやアスベスト発見時の適切な対応、専門業者への依頼の重要性についても詳しく解説します。 さらに、アスベストに関する法律や罰則規定も網羅的に解説することで、電気工事に関わる全ての人が安心して作業できるよう、必要な情報を提供します。

電気工事とアスベスト: 切っても切れない関係

電気工事は、建物の新築時だけでなく、改修や増築、設備の更新など、あらゆるタイミングで行われます。そして、これらの工事現場には、アスベストが潜んでいる可能性があります。
特に、1995年以前に建てられた建物では、アスベスト含有建材の使用が一般的であったため、電気工事に伴いアスベストに接触するリスクが高まります。

建物の種類とアスベスト使用箇所

アスベストは、その耐火性、断熱性、絶縁性などの特性から、様々な建材に広く使用されてきました。電気工事が行われる場所にも、アスベスト含有建材が多く存在します。

建物の種類アスベスト使用箇所例
住宅屋根材(スレート、波形スレート) 外壁材(スレート、ALCパネル) 内装材(天井板、壁板) 断熱材 床材(ビニル床タイル)
ビル・マンション外壁材(スレート、ALCパネル、吹き付け材) 内装材(天井板、壁板、間仕切り壁) 断熱材(吹き付けアスベスト、保温材) 配管の保温材、断熱材 ダクト
工場・倉庫屋根材(スレート、波形スレート) 外壁材(スレート、ALCパネル、金属板) 断熱材(吹き付けアスベスト、保温材) 配管の保温材、断熱材 ボイラー、煙突の断熱材

上記はあくまで一例であり、建物の種類や建築年代によって、アスベスト使用箇所は異なります。
電気工事を行う際には、事前に建物の図面や資料を確認し、アスベスト含有建材の有無を把握することが重要です。

電気工事でアスベストに遭遇するケース

電気工事では、以下のような作業において、アスベストに接触する可能性があります。

天井裏や床下での配線工事

天井裏や床下には、断熱材としてアスベストが使用されていることがあります。配線工事の際に、これらの断熱材を撤去したり、移動させたりする際に、アスベストを吸入してしまうリスクがあります。また、天井材や床材自体にアスベストが含まれている場合もあります。

壁や床の配管工事

壁や床に配管を通す際、アスベスト含有建材を切断したり、穴を開けたりする作業が発生することがあります。これらの作業によって、アスベストが飛散し、作業員が吸入してしまうリスクがあります。

スイッチやコンセントの設置・交換工事

スイッチやコンセントの設置・交換工事の際にも、壁や天井に穴を開けることがあります。この際、アスベスト含有建材に接触する可能性があります。特に、古い建物では、スイッチやコンセントのボックス自体にアスベストが使用されているケースもあるため注意が必要です。

電気工事は、建物の様々な場所で行われるため、アスベストに遭遇するリスクは決して低くありません。作業員は、アスベストの危険性について十分に理解し、適切な対策を講じる必要があります。

参考資料:国土交通省:目で見るアスベスト建材

アスベストによる健康被害

アスベストは、その繊維が非常に細く、吸い込むことで容易に肺の奥深くまで到達してしまうことが、その危険性の根源にあります。長期間にわたり体内に留まり続けることで、深刻な健康被害を引き起こすことが知られています。

アスベストが原因で発症する病気

アスベストによって引き起こされる病気は、下記のように様々です。

病気説明
中皮腫肺や心臓、腹部などを覆う膜(中皮)に発生する悪性腫瘍です。アスベスト暴露との関連性が非常に強く、発症までに長期間を要するのが特徴です。
肺がん肺に発生する悪性腫瘍です。喫煙との関連性が特に高いですが、アスベスト暴露もリスク因子の一つとされています。特にアスベスト暴露と喫煙の両方が重なる場合、リスクがさらに高まります。
石綿肺アスベスト繊維が肺に長期間にわたって沈着することで、肺が硬くなって呼吸が困難になる病気です。咳や痰、息切れなどの症状が現れます。進行すると、肺の機能が著しく低下し、日常生活に支障をきたすこともあります。
良性胸膜疾患胸膜(肺を包む膜)に起こる病気のうち、悪性ではないものを指します。アスベスト暴露によって胸膜炎や胸膜肥厚などが起こることがあります。胸の痛みや息苦しさなどの症状が現れることがあります。

これらの病気は、いずれも進行すると命に関わる可能性があります。早期発見・早期治療が重要となるため、少しでも異変を感じたら、速やかに医療機関を受診しましょう。

発症までの潜伏期間と症状

アスベスト関連疾患の怖い点は、発症までに長い年月を要することです。潜伏期間は、病気の種類によって異なり、短いもので10年、長いものでは40年以上かかる場合もあります。初期症状も、自覚症状が乏しい、または風邪などの一般的な症状と似ているため、気づかないまま放置してしまうケースも少なくありません。

主なアスベスト関連疾患と潜伏期間

  • 中皮腫:20~40年
  • 肺がん:15~40年
  • 石綿肺:10~20年

初期症状

初期症状としては、下記のようなものがあげられます。

  • 息切れ
  • 胸の痛み
  • 体重減少
  • 食欲不振

これらの症状は、他の病気でもみられる一般的なものですが、アスベストを扱っていた経験がある、あるいはアスベストが使われている可能性のある建物で長期間生活していたという方は、特に注意が必要です。少しでも気になる症状があれば、医療機関を受診し、医師に相談するようにしましょう。早期発見・早期治療が重要です。

詳細については、独立行政法人 環境再生保全機構のウェブサイトも参考にしてください。

電気工事におけるアスベスト対策

電気工事は、建物のライフサイクルにおいて非常に重要なプロセスですが、それと同時に工事作業中におけるアスベストばく露のリスクも孕んでいます。安全な作業環境を確保し、健康被害を未然に防ぐためには、電気工事に関わる全ての人がアスベスト対策について正しい知識を持つことが重要です。

電気工事前に確認すべきこと

電気工事に着手する前の段階で、以下の点を確認することで、アスベストばく露のリスクを大幅に減らすことができます。

  1. 建物の築年数の確認 日本では、2006年9月以前に建築された建物には、アスベストが使用されている可能性があります。特に、1995年以前に建てられた建物は、アスベスト含有建材の使用率が高いため、より注意が必要です。
  2. 設計図書等の確認 設計図書や改修履歴などの資料には、アスベスト使用の有無に関する情報が記載されている場合があります。これらの資料を事前に確認することで、アスベスト含有建材の特定に役立ちます。
  3. 専門業者によるアスベスト調査 築年数や設計図書だけではアスベストの有無を断定できない場合、専門業者によるアスベスト調査が必須です。専門業者は、建物の状況に合わせて適切なサンプリングを行い、分析機関にてアスベストの有無を判定します。

参考資料:厚生労働省:石綿則に基づく事前調査のアスベスト分析マニュアル

アスベスト発見時の対応

電気工事中にアスベストが発見された場合は、直ちに以下の対応が必要です。

法令に基づいた適切な処理

  1. 作業の中止 アスベストが発見された場合は、直ちに作業を中断し、作業員は安全な場所へ避難する必要があります。アスベストは、飛散すると非常に危険なため、二次被害を防ぐための迅速な対応が重要です。
  2. 関係機関への報告 アスベストの発見は、労働基準監督署や都道府県労働局などの関係機関への報告が義務付けられています。速やかに報告を行い、指示を仰ぎましょう。環境省:石綿事前調査結果の報告について
  3. 専門業者へのアスベスト除去処理の依頼 アスベストの除去は、法律に基づき資格を有する専門業者でなければ行うことができません。除去作業は、周辺環境への影響を最小限に抑えながら、安全かつ適切に実施する必要があります。

専門業者への依頼

アスベストの除去は、専門的な知識と技術、そして適切な設備を必要とするため、必ず専門業者に依頼しましょう。専門業者は、以下の様な流れでアスベストの除去を行います。

  1. 現場調査と計画
  2. 作業区域の隔離と負圧養生
  3. アスベスト含有建材の除去作業
  4. 除去後の清掃と廃棄物処理
  5. 空気中のアスベスト濃度測定

これらの作業は、関係法令を遵守し、安全に配慮しながら行われます。専門業者を選ぶ際には、実績や信頼性などを考慮し、慎重に選定することが重要です。適切な専門業者を選ぶことで、安全かつ確実なアスベスト対策を実施することができます。

アスベストに関する法律と罰則

電気工事においてアスベストを扱う場合、関連する法律や罰則について理解しておくことは非常に重要です。無知によって法令違反を犯してしまうことを避けるためにも、ここで詳しく解説していきます。

電気工事に関わる法律

電気工事に関連する法律としては、主に以下の3つが挙げられます。

  1. 労働安全衛生法
  2. 石綿障害予防規則
  3. 廃棄物処理法

これらの法律は、電気工事に関わる全ての人にとって、アスベストによる健康被害を防止するために遵守すべきものです。

労働安全衛生法

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を守ることを目的とした法律です。
アスベストに関しては、その製造、使用、解体など、様々な場面において労働者の健康を守るための措置を講じることが義務付けられています。

石綿障害予防規則

石綿障害予防規則は、アスベストによる健康被害を予防するために定められた規則です。この規則では、アスベストの含有が疑われる建材の調査、アスベストの除去作業時の措置、アスベスト廃棄物の処理方法などについて、具体的な基準が定められています。

廃棄物処理法

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)は、廃棄物の処理に関する法律です。アスベストは、その有害性から「特定廃棄物」に指定されており、適切な処理が求められます。この法律では、アスベストの収集、運搬、処分に関する方法や基準が定められており、違反すると罰則が科せられます。

  • 処理の委託:アスベスト含有廃棄物は、処理を専門業者に委託することが一般的です。この際、マニフェストと呼ばれる伝票を用いて、廃棄物の流れを管理する必要があります。廃棄物処理法に基づく 石綿含有廃棄物等処理マニュアル に即して適切に運搬・処分することが求められます。

罰則規定

これらの法律に違反した場合、罰則が科される可能性があります。特に悪質な場合には、事業者だけでなく、現場責任者や担当者個人も罰せられることがあります。主な罰則は以下の通りです。

法律違反内容罰則
労働安全衛生法アスベスト濃度の測定未実施、保護具の不着用など6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金
石綿障害予防規則事前調査の未実施、除去作業時の基準違反など1年以下の懲役または50万円以下の罰金
廃棄物処理法無許可での処理、不適切な処理など5年以下の懲役または1億円以下の罰金(法人の場合は3億円以下の罰金)

これらの罰則は、アスベストの危険性に対する意識を高め、法律遵守を徹底させるためのものです。電気工事に関わる全ての人が、アスベストに関する法律を正しく理解し、安全な作業環境を確保することが重要です。

まとめ

電気工事は、建物の築年数や構造によっては、アスベストばく露 のリスクが伴う作業です。 電気工事士は、アスベストの健康被害の深刻さを認識し、作業前に必ず建物のアスベスト使用の有無を確認することが重要です。 もし、アスベストを発見した場合は、決して自ら撤去しようとせず、法律に基づき、適切な資格を持つ専門業者に処理を依頼しなければなりません。 無資格でのアスベスト除去は、健康被害だけでなく、法律違反として罰則の対象となる可能性があります。 電気工事関係者は、アスベストに関する正しい知識を身につけ、安全な作業環境を確保するために、適切な対策を講じるようにしましょう。

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