PCB廃棄物の関連法案はどのように改正された?内容について分かりやすく解説

PCB廃棄物関連法案改正 PCB

PCB廃棄物に関する法案が2019年に改正されました。この法改正により、PCB廃棄物の分類や処理方法について、様々な変更が加えられました。
今回はPCB廃棄物の関連法案の改正について解説いたします。

PCB廃棄物の分類についての影響

PCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物は2019年12月の法改正により、高濃度PCB廃棄物と低濃度PCB廃棄物を分類する基準値が変わりました。

高濃度PCB廃棄物

法改正以前、PCB濃度0.5%を超える廃棄物は全て高濃度PCB廃棄物に分類されていましたが、法改正によってPCB濃度10%以下の可燃性の汚染物などは除外されました。
ただし、10%以下の可燃性の廃棄物でも0.5%を超えるPCBを含む廃油は高濃度PCB廃棄物のままです。

低濃度PCB廃棄物

高濃度PCB廃棄物から除外されたPCB濃度0.5%~10%の可燃性の汚染物などの廃棄物は、低濃度PCB廃棄物に分類されることになります。
既に高濃度PCB廃棄物としてJESCO(中間貯蔵・環境安全事業(株))に登録されていても、PCB濃度0.5%~10%の可燃性の汚染物などであれば低濃度PCB廃棄物として処分することができます。
その場合、無害化処理認定施設などの処理対象であることを確認する、JESCOの登録を解除するなどの手続きが必要です。

PCB廃棄物の処理方法についての影響

 PCB廃棄物の分類基準が変更されると対象の廃棄物の処理方法も変わります。
また、処理基準も一部改正されています。

一部の高濃度PCB廃棄物が低濃度廃棄物扱いに

先述のとおり、PCB濃度0.5%~10%で可燃性の高濃度PCB廃棄物は、低濃度PCB廃棄物に分類されることになりました。
可燃性の廃棄物とは具体的に、汚泥、紙くず、木くず、繊維くず、その他PCBが塗布、または染み込んだ物などです。
対して、低濃度PCB廃棄物の対象とならない非可燃物は金属くずやガラスくず、陶磁器くずなどが対象になります。

低濃度PCB廃棄物の焼却

高濃度PCB廃棄物はJESCOでプラズマ溶融処理をされますが、低濃度PCB廃棄物に認定されると主に焼却による無害化処理をすることなります。
低濃度PCB廃棄物の処理は環境大臣により認定された「無害化処理認定施設」や都道府県の知事が許可した施設で行われます。

無害化処理温度の条件が引き下げに

無害化処理認定施設などでは焼却・無害化処理温度1,100℃以上が処理条件の1つでしたが、これまでの焼却実証実験によって処理温度を引き下げても安全であることが確認され、850℃以上での実施に引き下げられました。

ただし、法改正以前に低濃度PCB廃棄物の対象になっていたPCB濃度0.5%以下の廃棄物が850℃以上に引き下げられる一方で、法改正によって新たに加えられたPCB濃度0.5%~10%の可燃性の汚染物などの廃棄物はこれまで通りの1,100℃以上での処理が必要です。

PCB廃棄物の保管者への影響は?

2019年の法改正では、PCB濃度0.5%~10%の高濃度PCB廃棄物の処理体制の構築がすすめられましたが、それとともにPCB廃棄物の保管者にとっていくつかのメリットが生まれました。

処理を委託できる対象が拡大

高濃度PCB廃棄物は処理を委託できるのがJESCOのみですが、低濃度PCB廃棄物に分類変更された廃棄物は、無害化処理認定施設や知事が許可した施設などの民間の処理業者にも委託できるようになりました。

また、これによって高額な費用がかかるJESCOのプラズマ溶融処理から、民間処理業者によるより安価な焼却・無害化処理に変わるので、経費を安く抑えることができるというメリットができました。

処理期限が延長

高濃度PCB廃棄物の処理期限は、2018年3月末~2023年3月末までの間で地域ごとに決められていましたが、既に処理期限は満了しております。
2024年現在は事業終了準備期間として、限定された処理施設にて2026年3月31日までの処理受付を行っています。
低濃度PCB廃棄物の処理期限については、2027年3月末日までとなります。

つまり、 法改正によって低濃度PCB廃棄物に加えられたPCB濃度0.5%~10%の可燃性の汚染物などの廃棄物は、実質的に処理期限が延長されたことになります。

なお、事業終了準備期間満了となる2026年4月1日以降、高濃度PCB廃棄物を処理する方法がなくなってしまうことになります。JESCOの事業延長などの方法がとられない場合、永久的に管理するか、あるいは莫大な費用を投じて自分で処理するしかなくなるので、処理期限には十分注意が必要です。

無害化処理委託できる認定施設が増加する可能性

法改正では無害化処理温度が引き下げられるなど低濃度PCB廃棄物の処理基準が緩和されました。これによって無害化処理委託できる認定施設が増加する可能性があります。

 廃棄物処理法に基づく無害化処理認定施設や、微量PCB汚染廃電気機器等の処分業に係る都道府県知事等の許可を受けた業者は、環境省のホームページ上に掲載されています。
事業者によって処理できる廃棄物は異なりますので、事前に種類などを確認してご利用ください。

まとめ

法改正に伴い、PCB含有濃度によって処理方法や期限が変わりましたが、いずれにしてもPCBは人体に影響を及ぼす物質であることに変わりはありません。
敷地内に保管をしている場合は、法律に基づき迅速かつ適切に処理しましょう。

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