絶縁油などに含まれており、触れたり体内に入り込んだりすることによって人体に悪影響があるといわれるPCB(ポリ塩化ビフェニル)。現在は使用が禁止されていますが、意図せず入り込んでしまったというケースも考えられます。PCB廃棄物を適切に処理するためには調査が必要になります。
今回はPCB廃棄物を処理するにあたって、どのように調査を行うのか詳しく解説いたします。
高濃度PCB廃棄物を適切に処理するためには?
PCB原液が廃棄物となっているものや、PCBを含む油が廃棄物となり、割合が0.5%(5,000ppm)を超えているものを高濃度PCB廃棄物といいます。
高濃度PCB廃棄物を適正に処理するための過程を一つずつ解説いたします。
届出と登録申請
高濃度PCBが含まれていることを確認したら、その製品を保有する事業者は保管および処分状況について届け出をしなければなりません。そして、処分先であるJESCO(中間貯蔵・環境安全事業株式会社)に機器の登録または搬入荷姿登録を行います。
使用中の機器でも登録は可能ですが、感電等の恐れがあり大変危険なので、電気主任技術者などの指示に従い、十分に注意を払いましょう。
登録受付ができたら確認書が送付され、処理契約手続きの連絡が来ます。
対象となる中小企業者や法人などは「中小企業者等軽減制度申請」をすることができ、審査が通れば処理費用が割引になります。
処理と運搬の委託契約
登録ができたら、JESCOと処理委託契約を締結します。準備は行ってくれるため任せましょう。
その後、事業所ごとに許可された収集運搬事業者の中から選んで処理運搬委託契約を直接結びます。
見積もりと契約が済んだら、JESCOの担当者に連絡しましょう。
支払いをして搬出
支払いが済んだら搬出や運搬を行います。
漏れや異常がないかJESCO職員が立ち会い、運搬中もGPSで運行管理をしているため安心です。
施設に搬入が完了したら終了です。
PCB汚染の判別方法
PCBが含有しているかどうかを判別する方法を、濃度と機器ごとに解説いたします。
低濃度PCBが含まれる可能性が高い電気機器等
国内メーカーが平成2年頃まで製造した電気機器等には低濃度PCBが含有している可能性が高いといわれています。コンデンサの中には絶縁油の入れ替えができないものもあり、平成3年以降製造された機器についてはPCB汚染の可能性はないとされています。
まず電気機器に取り付けられている銘板を確認し、製造年とメンテナンス履歴等で判別しましょう。
上記の製造年よりも前に製造されている機器だった場合は絶縁油を採取し、分析してPCB濃度を測定する必要があります。
高濃度PCBが含まれる可能性が高いトランスやコンデンサ
昭和28年から昭和47年に国内で製造されていたトランスやコンデンサに使われている絶縁油にPCBが含まれている可能性があります。こういった機器にPCBが含有しているかは、機器に取り付けられている銘板を確認して判別できます。
確認できない場合は各メーカーに問い合わせましょう。
高濃度PCBが含まれる可能性が高い安定器
製造から40年以上経過しているPCB使用の安定器は、劣化が原因で破裂する可能性があり、PCBが漏えいするという事故が発生しています。一度調査を行っていても起こり得るため、必ず全数調査を行う必要があります。昭和32年1月から昭和47年8月までに製造された照明器具の安定器には、PCBが使用されている可能性があります。
貼り付けられている銘板にメーカーや型式、種別、性能などが記載されていることが多いため、製造年月日から判別することができます。不明な場合や詳細を知りたい場合はメーカーに問い合わせましょう。
PCB濃度の確認
PCB濃度を確認するために、どのような分析を行うのか解説いたします。
絶縁油を採取し濃度を分析
PCB濃度を確認するためには、絶縁油を採取する必要があります。採取キットが送付され、自身で採取して返送する事業者がほとんどです。
手袋とスポイト、ラベルシール、チャック付きの袋が主な内容で、ごく少量の絶縁油をスポイトで分取し、容器に入れてしっかりチャック付き袋に入れます。採取容器と付属の書類を送ったら完了です。
採取した試料の取り扱い
採取した試料は分析のために運搬されますが、その際は廃棄物処理、PCB特別処置法の適用外です。
しかし、できるだけ採取する試料は少量にしましょう。分析後、試料が余った場合は保管事業者が廃棄物として保管します。
迅速判定法と定量測定法
まず迅速判定法で、PCBの有無を測定します。迅速判定法はその名の通り短時間で多量のPCBを分析し、含まれているかを判定することができます。感度や再現性なども問題ありません。ここでPCBが検出された場合、定量測定法で濃度を確認します。
平成4年に厚生省が定めた精密分析法は時間もコストもかかりますが、簡易定量法を用いると精度は変わらず簡易的に分析を行うことができます。ここで濃度が0.5mg/kgを超えた場合、PCB廃棄物に該当するため処理の必要性があります。
まとめ
PCBは手順を踏み、適正に処理する必要があります。そのためにも自身が所有する電気機器にPCBが含有していないか判別し、濃度を確認しなければなりません。濃度を確認するための分析にはいくつかの種類があります。株式会社IMICでは、簡易定量法での分析や個別項目で迅速判定分析を行っております。
株式会社IMICが運営する検査分析ポータルサイト・分蔵検蔵では、日本全国でPCBの検査分析を承っております。
絶縁油、塗膜、ケーブル、シール材、ウエス、排水等のPCB汚染物の PCB分析を取り扱うと同時に、提携する民間機関によるPCB廃棄物の運搬処分まで 手掛けております。
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