土壌が汚染された地域や場所で働く人や、そこで生活する人は、より自然への思いが強いことが予想されます。危険な物質と隣り合わせの条件の中で自分の身を守るには、環境汚染に対する知識や情報、個人でもできる日常的な対策をしっかり把握することが大切。そこで今回は、自然が脅かされている状況の中、環境対策に取り組む人たちの活動を通し、日本の自然やそこで暮らす人たちの思いについて考えてみます。
現場に影響を与える3つの自然環境
私たち人間は、何らかの環境の中で生きています。周囲に水や土、空気がないと生き物の生存は不可能です。それは普段の生活に限らず、建物工事や土地調査などの現場にも影響を及ぼすでしょう。
それら工事現場に与える大きな自然の条件とは何でしょう?3つ挙げるとすれば、「水」「土壌」「地盤」になるかと思われます。
・水が与える影響
飲料水や洗浄水に使用される水は、建設道具や掘削機械の洗浄など、品質管理や衛生管理に欠かせない物質です。その水が汚染されれば、適切な洗浄や衛生管理が守られないことを意味します。
・土壌が与える影響
化学物質や農薬、油など、健康被害リスクの高い物質に汚染された土壌環境下で工事を行うと、工事関係者への健康被害は避けられないでしょう。地中の調査を行うために汚染された土を掘削するだけでも、有害物質を体内に吸い込んでしまうかもしれません。
・地盤が与える影響
脆弱な地盤の上で工事を行うと、崩落や地崩れなど、災害が起きるケースも想定されます。健康被害よりも事故やトラブルによる被害リスクが強い環境要因です。
考えるべきことは、環境から影響を受けることばかりではありません。工事による騒音や振動、粉塵などの被害が自然に対して与えるリスクも考慮する必要があります。空気や水が汚されたら、周辺の住民にも迷惑をかけてしまいます。水や空気、土壌などはただ存在すればいいというものではなく、国や自治体、工事関係者、周辺住民も含め、みんなが住みやすい自然を守っていく努力が求められます。
どの環境を守らなければいけないのか?
土壌汚染の原因となる物質にはさまざまな種類がありますが、とくに有害でリスクの高い物質に関しては、法律で規制の対象となっています。それらの物質を以下に記します。
・四塩化炭素
溶剤、ドライクリーニングなどに使用
・ジクロロエタン
樹脂の原料や殺虫剤などに使用
・ジクロロプロペン
農薬や殺虫剤に使用
・トリクロロエタン
殺虫や殺菌剤、溶剤などに使用
・ベンゼン
塗料やニス、ガソリンなどの精製に使用
・カドミウム
電池、メッキ、合金などに使用
・水銀
殺菌剤、防腐剤、蛍光灯などに使用
・フッ素
アルミ精錬、ガラス化工などに使用
これらの物質は、私たちが普段の生活の中で何気なく使用している日用品などにも含まれています。私たちが生活の中で、環境破壊を防止できる対策として心がけたいことは、これら危険物質の入った殺菌剤や殺虫剤、農薬や洗剤などを適切に使用し、使い終わったら不法投棄せずにルールにのっとって正しく処分することです。法律やルールを守れば誰にでもできることですので、みんなが自然のことを意識して取り組みたいですね。
日本の美しい自然を守るために
日本の特徴といえば、美しい自然と四季。これらの条件の中、美しい風土が育まれてきました。このかけがえのない自然を次世代まで継承していくには、一人一人が自然を守る意識を高めていくことがまず何よりの対策といえるでしょう。
沖縄の例を紹介しますと、沖縄の美しいサンゴ礁は今、赤土によって危険にさらされています。赤土とは、沖縄県の特殊な土壌で、沖縄全体の7割をこの赤色系の土壌が占めています。この赤土が豪雨などの影響で河川に流されると、サンゴ礁などをはじめ、水産業や観光資源にも大きな影響を与え、喫緊の課題として国や沖縄県が対策に乗り出しています。
サンゴを赤土から守るために国や沖縄県が取り組んでいることは、赤土の堆積状況の調査や、浄化量の把握調査などです。赤土の流出削減目標を定め、サンゴを守る取り組みに全力を挙げています。
沖縄といえば、絶滅危惧種にも指定されているジュゴンを守ることも大切な課題です。ジュゴンの生息区域を守るため、沖縄の市民グループが取り組んでいることは、ジュゴンの食跡調査です。ジュゴンの生息状況を、食跡を通して調べ、ジュゴンが利用する海藻場の状況とその動向を把握し、保護対策のためのデータ収集に取り組んでいます。
生物豊かな海を目指して沖縄が行った行動
沖縄はまた、米軍基地によってその美しい自然が脅かされる状況でもあります。みんなが大切に守ってきた自然を基地がもたらす騒音や土壌汚染、生態系の破壊から守るために沖縄県が行っている取り組みは、ハワイ州や韓国の済州島と環境対策の面で連携し、世界に向けて力強くアピールしていくこと。国際自然保護連合の総会にて、沖縄県とハワイ州、韓国・済州島の首長らがサミットを開いたことからも、その緊密ぶりはうかがえるでしょう。
沖縄県は今後も、価値観を同じくする海外の自治体と連携し、基地反対とジュゴン保護を訴えることで、沖縄の自然を守っていく姿勢を明確にしています。
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