感染症の原因となる細菌は、季節によってさまざまな種類のものが発生します。ここでは特に、夏に注意したい細菌の特徴と予防法について説明します。
病原性大腸菌
この細菌は全部で5つに分類されますが、夏に脅威となるのが、「腸管性大腸菌O157」です。人や牛の糞便、または牛肉などを介して感染します。予防策として、食肉を扱った器具類の殺菌、帰宅時と調理前、食事前のうがいと手洗いの徹底です。そして食肉は低温管理と加熱処理を心がけ、特に牛肉の場合は「75℃以上で1分間加熱する」などになります。
腸炎ビブリオ
海水の中に生息する細菌で、高温な環境でもっとも繁殖し、魚介類を食して感染するケースが目立ちます。この細菌は真水では生息できません。そのため、夏の海で採れた魚介類はきれいな水で洗浄すればOK。4℃以下で低温管理し、食事に出す際は65℃以上で1分以上加熱処理を心がけます。また、魚介類をさばいた包丁などもきれいに洗浄・消毒を忘れないようにしてください。
ノロウィルス
人の腸管内でのみ、増殖するのが特徴です。ノロウィルスをもった人が調理すると、食品を通して簡単に感染拡大を引き起こします。予防法は、二枚貝の生食をさけること。トイレの後はしっかり手洗いすること。そして下痢などの症状があるときは吐瀉物には絶対ふれないようにすることが大切です。
夏の衛生管理は検便が不可欠
夏場の食中毒を防ぐには、徹底した衛生管理が不可欠です。しかし、それだけでは十分とはいえません。調理担当者が食品を介して発症する食中毒を防ぐには、「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」にもとづき、検便をしっかり行うことが大切です。この検便は、年間を通して行う必要も忘れてはならないでしょう。
時期に関係なく検便を実施する理由は、「健康体の感染の有無」を確認するためです。健常者がO157などの病原体に感染しても、これといった自覚症状があらわれません。そのため、感染の自覚のないまま病原菌を周囲に拡散してしまうリスクがあるのです。これを防ぐには、定期的に検便を実施する必要があるといえるでしょう。
高温と多湿を好む細菌は、飲食店にとっては天敵ともいえる存在です。そんな厄介な相手でも、その特徴と予防法を知り、対策を整えれば必要以上に怖れることはありません。食中毒を防止するうえでまず取り組むべきことは、食品や環境面の衛生管理の徹底、そして季節を問わない検便の実施です。この2点を意識して取り組めば、多くのお客さんも安心してお店に足を運ぶことができるでしょう。]]>