化学物質などを扱う製造業や工場事業者は、国民の生活や環境に与えるリスクを常に計算に入れながら、事業運営していることでしょう。企業の利益と同時に、国民の健康や環境を守るには、土壌汚染対策法など法律についての知識や、そのガイドラインについて理解を深めることが大切。そこで今回は、化学物質を扱う中小企業ならぜひ抑えておきたい、土壌汚染のリスクや対策法の仕組みについて、汚染が基準と汚染された土地への対策について説明します。
合理的な対策を実現するには?
土壌汚染のリスクには、地下水経由の間接摂取と、汚染土壌に触れる直接摂取があります。地下水経由の間接摂取による健康リスクを示すものを土壌溶出量基準、汚染土壌に触れる直接摂取による健康リスクを示すものを土壌含有量基準といいます。
・土壌溶出量基準について
70年間を一生涯とし、汚染土壌の土地に居住したと仮定。1日当たり2リットルの地下水を飲用したと想定して基準値を設定。
・土壌含有量基準について
70年間を一生涯とし、汚染土壌の土地に居住したと仮定。1日当たりの土壌接食量が子ども(6歳以下)200㎎、大人100㎎と想定して基準値を設定。
これらの基準値は対策選定にも関係します。調査の結果、土壌溶出量基準が超えていて、飲用井戸がある場合は、封じ込め対策が必要です。(飲用井戸がない場合はリスク管理の継続)また、土壌含有基準が超えていて、土の露出がある場合は、舗装・盛り土などの措置が必要です。(露出がない場合はリスク管理の継続)
・リスクの管理
土壌の定期的な点検・監視や汚染状況の記録など。土地の権限が変わる場合は、それらの情報を継承します。
・封じ込め
遮水壁などを使って有害物質を封じ込めます。シートなどを使った遮水工封じ込めなどがあります。
・舗装と盛り土
基準値を超えた土壌の上から汚染されていない土壌を覆い被せ、汚染の浸食を防ぎます。
土壌汚染対策法の対策例
指定基準を上回る有害物質を含む土壌を「基準不適合土壌」といいます。調査の結果、基準不適合土壌が見つかった場合、「管理型」もしくは「除去型」によって対処します。
・管理型
有害物質の浸出ルートを遮断し、人体への影響を防ぎます。
・除去型
土壌中の有害物質濃度を基準値以下まで下げ、健康への影響を防ぎます。
それぞれの対策事例は下記の通りです。
・不溶化(管理型)
土中へ薬剤を注入。有害物質が水に溶け出すのを防止します。この他、有害な土壌を掘削し、プラントなどで不溶化して埋め戻す措置がとられることもあります。
・掘削除去(除去型)
有害な土壌を掘削除去、汚染されていない土壌を埋め戻します。有害土壌は場内または場外に搬出し、適切なかたちで処理します。
土壌汚染対策も、汚染濃度やリスク回避の考え方に合わせ、さまざまな方法がとられます。化学製品の製造などに携わる中小企業の関係者は、この点もしっかり押さえて環境対策や衛生管理に取り組んでいきたいですね。
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