パート1ではロンドンオリンピックで行われた土壌汚染対策を紹介しました。対策実施のスピードや開催後の整備内容を参考にしつつ、日本がオリンピックに向けて取り組むべき課題と対策について考えます。
ロンドンでの土壌汚染対策、スピードと品質管理の両立
汚染された土壌の洗浄計画に加え、競技場の建設までをオリンピック開催まで間に合わせるためには、精度の高い調査とスピーディな措置という矛盾した課題を同時に乗り越える必要がありました。それに対応するため、主催者サイドは初期の調査、計画立案、円滑に作業を進めるための協業システムの構築などを迅速に行いつつ、さまざまな場面で柔軟に対応することで、あらゆる障害を乗り越えることに成功しました。
サイト内の土壌調査に要した報告書は350以上にものぼります。3万以上のサンプリング、200に及ぶ個別データの品質管理、それを可能にするための共通電子フォーマットの作成と、調査と管理を確実に行うための洗浄計画が作られました。採取した土壌サンプルのモニタリング分析は5段階に分けてチェックし、オリンピック実行委員会が承認するという手続きを取りました。最終的に汚染土壌の調査・浄化工事に関するプログラムは1,200以上にも及び、厳格に許認可手続きが取られ、実行に移されました。
ロンドンオリンピック開催後の土壌汚染の状態
オリンピック後の競技会場は現在、「エリザベス女王オリンピック公園」と名を変え、跡地利用のための整備が進められています。当初の計画から、ロンドン近郊に住む住民の憩いの公園、自然と共存できるリクリエーション施設への利用につながるよう、競技場の建設や周辺環境の整備が進められてきました。結果的にロンドオリンピックは、首都ロンドンの大がかりな地域再生プロジェクトという果実をもたらし、“史上もっともグリーンなオリンピック”との評価を得ています。また、グリーンオリンピックで培われた技術とノウハウは、そのまま2016年のリオデジャネイロ五輪の調査計画にも生かされました。
日本がオリンピックに向けて取り組むべき対策
ロンドンオリンピックの事例を見れば分かるように、オリンピックを成功裏に終わらせるには、効果的な環境対策を打ち出すための土壌汚染調査が不可欠といえるでしょう。NPO法人である「地盤環境技術研究センター」が東京オリンピックの競技会場や選手村が設置される地区を中心に、土壌汚染に関する調査と対策を試算した結果、調査面積300万㎡のうち、120万㎡が汚染地域と認められました。実に約40%が健康や環境に有害とされ、何らかの対策が必要と判定されたのです。
具体的な対策としては、「アスファルト舗装」「掘削・土工」「汚染土壌の処理」あるいは「全面アスファルト舗装」「全量掘削除去」など。これらを実施するための対策費用もそれ相当を必要とするでしょう。
すでに、東京五輪後を見据え、晴海地区や豊洲エリアなどの湾岸エリアの再開発を含めた大規模な地域開発プロジェクトが進行しています。東京オリンピックとその後の都市再生プロジェクトが世界のモデルケースになるには、詳細な調査に基づく土壌汚染対策が必要不可欠です。
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